※コメント欄にて主催者様からコメントを頂きました。
追記という形で間に挟みます。
とっても行きたかった「
宇宙酔」、残念ながら予定が合わず(´;ω;`)
今回は宇宙エレベーターの話題でした。
「宇宙酔(うちゅうよい)」は飲み食いしながら宇宙に関わる方からお話を伺うトーク系イベント。 サイエンスカフェならぬ「サイエンス・パブ」です。 今回は大林組技術本部の石川洋二さんをゲストにお招きします。 かつてSFで聞かれた「宇宙エレベーター」という構想は近年において「低軌道への大量輸送手段」として現実的な検討が始められています。 なぜ宇宙エレベーターが必要なのか、実現すればどうなるか、どうすれば実現できるか、現在の研究はどの段階にあるのか。 昨年「宇宙エレベーター建設構想」を打ち出した建築会社の技術者にそれらをお話いただきます。 食べ飲みしながら楽しんで頂けたら幸いです。
それを見ながらメモを取ったのでまとめます。
※途中、聞き取りづらいところもありました
また、自分が勘違いしている点もあるかもしれませんので
不備がありましたらコメントにてご指摘いただければ幸いです。
なんといっても今回の注目ポイントはゲストの石川さん、
建設会社大手の大林組にて2012年2月に発表された
実際の宇宙エレベーターの建設計画です。
といってもまだまだ検討課題が多いものですが、
いい大人がガチで夢みたいなプロジェクトを考える、
そこにロマンがあり、実現への第一歩があります!
そして今回はもうちょっと踏み込んだ詳しい内容について
石川さんが語ってくれました。
まずは宇宙エレベーターの基礎知識です。
ある程度知っている方はスルー推奨。
こちらの2冊の内容とほぼ一緒です。
宇宙エレベーター 宇宙旅行を可能にする新技術/石川憲二
宇宙旅行はエレベーターで/ブラッドリー・C・エドワーズ/フィリップ・レーガン/関根光宏
19時7分にスタート、まずはゲストの石川さんの紹介。
ISASで博士を取ったそうです。
☆大林組の構想は2012年2月に発表
直立したケーブルをクライマーが昇降する形式。
直立するのは重力と遠心力を吊り合わせてバランスを取るため
(先端には重り=カウンターウェイトをつける)
おおまかに地上側のアースポート(いわゆる港)、
人や物を運ぶクライマー(電車で言えば車両)、
静止軌道ステーション(上空36000km、電車で言えば駅)、
カウンターウェイト(98000km)で構成
ケーブルは98000kmで設計
地球直径の10倍弱、月まで4分の1の長さ
◯主催者様からのコメント
「> ケーブルは98000kmで設計
正しくは96000kmです。
ケーブル補強時のクライマーを均等に発射するために、静止軌道の1/3である 12000km の倍数を採用したとのこと。
この長さなら、常時8台のクライマーをケーブル上に置くことができます。
物や人を運んで放出することが主な目的。
遠心力の関係で静止軌道より上なら地球の重力を振りきれる、
第2宇宙速度で月や火星へも到達可能。
現在、宇宙へ行く手段はロケットのみ
膨大な燃料、限られる荷物、コストが高く、使い捨て、
といったデメリットがある。
宇宙エレベーターなら安く行ける
構想は100年前からある(小説にもなっている)
◯主催者様からのコメント
「> 構想は100年前からある(小説にもなっている)
最初に構想したのは旧ソ連のツォルコフスキーです。 ロケットをはじめとして現在の宇宙開発のほとんどすべてを構想したことで有名な人ですが、 宇宙エレベーターについては液体ロケットエンジンよりも前に構想していたようです。 ただし彼の思考実験では地上から静止軌道までの高さの塔を建てるというもので、 静止軌道からケーブルを下ろすという現代的な姿ではありませんでした。 また宇宙エレベーターを題材とした小説では、クラークの「楽園の泉」が有名です。 近年では、今回の会で取り上げた小川一水の「妙なる技の乙女たち」のほか、
野尻抱介の「南極点のピアピア動画」などがあげられます。」
☆宇宙エレベーターを使って何をしたいか?
宇宙空間の定義は、上空100kmより上
低軌道(300km~1400km)への衛星投入(第1宇宙速度)
現在の人工衛星の大半や、国際宇宙ステーションがある軌道。
静止軌道(36000km)への衛星投入
主に気象衛星や放送衛星に使われている
月(地球から38万km)や、太陽系惑星への探査機を放出
エレベーター先端から放出すれば第2宇宙速度で
太陽を回る軌道に入れる
イトカワに向かった「はやぶさ」や、
火星に向かった「キュリオシティ」のような探査機を送れる
☆宇宙エレベーターを作るのに当たっての大問題
これまでは、ケーブルに使える物質が無かった
鋼鉄で計算すると引っ張り強度が足りずにちぎれてしまう
20年前(91年)、NECの飯島さんがカーボンナノチューブを発見
鉄の100倍の強さ、宇宙エレベーターの実現可能性が出てくる
※カーボンナノチューブ、作ったのではなく発見された
フラーレン構造がどうたらこうたら、このへん曖昧
◯主催者様からのコメント
「> フラーレン構造がどうたらこうたら、このへん曖昧
カーボンナノチューブ発見の逸話です。 1991年当時、炭素系材料の研究ブームと言えば C60(サッカーボールフラーレン) に代表される「フラーレン」でした。
これは炭素電極をアーク放電によって蒸発させると、陽極側にできるものです。
フーラレンがブームですから当然誰もが陽極側を観察するところですが、
NECの飯島さんは陰極側を観察しました。 そこで発見されたのが「カーボンナノチューブ」です。」
☆なぜ宇宙エレベーターを作るのか?
運ぶコストが既存ロケットの100分の1になる
H-IIAロケットならざっと100億円
退役したスペースシャトルで500億円
1kgあたり100万円かかる
ロケットは燃料に対するペイロード・本体が
缶ジュースと同じ(飲み物=燃料、缶=ペイロードと本体)
ほとんどが燃料
宇宙エレベーターにかかるコストはほとんどが電気代、
クライマーの昇降に使われる
1kgあたり1万円で宇宙へ。(ただしランニングコスト)
イニシャルコスト(建造費)は別
しかし再利用できるので使えば使うほどコストが下がる
【ここから大林組の建造構想】
ケーブル98000km、先端にバランスを取るカウンターウェイト、
ケーブル質量1に大してカウンターウェイトは0.92
静止軌道に重心が来る
宇宙エレベーターそのものを1つの人工衛星と考える
「ケーブルをギュッと縮めると静止軌道衛星になる」
=「静止軌道から上下にケーブルを伸ばした衛星」
アースポート、地球につなぎとめる部分
空港がエアポートなので港という表現がしっくりくる
クライマーで上昇、重力がどんどん少なくなっていく
火星重力センター(3分の1G)、上空3900km
月重力センター(6分の1G)、上空8950km
ともに訓練や研究に使う施設
低軌道投入ゲート、23750km
高いところまで運んで下へ落とすと低軌道に衛星を送れる
静止軌道ステーション、36000km、無重量状態になる
ここに重心が来るので大型施設が作れる
ケーブルにつなぎとめる必要はない
☆最大の目的は静止軌道上に宇宙太陽光発電衛星を作ること
三菱やJAXAで研究されているがあまり進んでない
ロケットでの打ち上げとなると採算が合わないため
数万トン打ち上げないと発電所にならない
数千機のロケットが必要、現実的じゃない
火星連絡ゲート、57000km
ここから放出すると火星へ到達できる
エレベーター先端、太陽系探査ゲート
放出した探査機が加速すれば土星以遠へも行ける
内惑星(水星・金星)へも公転方向の反対へ放出すれば到達できる
内外惑星、月、低軌道、静止軌道いずれへも運べる
☆建設方法(大林組なんで施工してナンボ)
大きく分けて2工程
1.芯となるケーブルを作る
2.芯となるケーブルを補強する
まずデルタ級ロケットで芯ケーブル(20トン)を打ち上げ
低軌道上で衛星を組み上げる
組み上がったら静止軌道へ
(無人機なのでゆっくりでいい、電気推進で上昇)
静止軌道に到達したら、ケーブルを下ろしながら
上空98000kmまで上昇(そのままカウンターウェイトになる)
地上では降りてきたケーブルをつなぎとめる
芯ケーブルの補強
510台(回)のクライマー(100トン)を投入
◯主催者様からのコメント
「> 510台(回)のクライマー(100トン)を投入
正確には、510回の補強を行ってケーブルの重量を当初の20トンから 7000トンに増やします。 これだけあれば、ケーブルは100トンの重量に耐えます。」
その後、各ステーションを建設していく
2段階にしたのは、ケーブル(総重量7000トン)を
一気に打ち上げるのはコスト的に無理だから
ケーブル(カーボンナノチューブ)は
7000トン、98000kmだが、遠くからは目に見えない細さ
リボン状(カセットテープのテープ)で幅5センチ、厚さ1.4ミリ
※質問・・鳥がぶつかるんじゃ?
→ぶつけないようにしないといけない(具体案はまだ検討課題)
※質問・・1本だと事故などがあったらどうする?
→安全性のため2本作成する必要がある、
行き帰りで使用するか、
分岐機構(箱根ケーブルカー的な)を用いるか
これもまだ検討課題
☆工程表(スケジュール)
ケーブルの補強に19年かかる!
2030年 芯ケーブルの打ち上げ
2049年 ケーブル補強完了、ステーション建築
2050年 完成、運用開始
逆算すると2025年にはアースポートの建築を始める必要がある
※2025年に着手できるのか? → お金と熱意があれば!
☆宇宙エレベーターの旅
1階 アースポート、出発
赤道上に建設する必要がある、海上と陸上に分けて作る
陸上はサポート施設、空港やホテルなど大型施設になる
セキュリティはそこまで高くなくていい
海上ポートへは海中トンネル、長さ10km
橋にしてしまうと海上ポートが動かせない
トンネルはコンクリート円筒形、透明にして海中散歩したい
→ 技術的に無理、ブレークスルーがあれば出来るかも
アースポート(海上)は発射施設、ケーブルをつなぎとめる、
メガフロートみたいなイメージ
浮体構造物(石油採掘施設とか)は大林組は実績多々あり
海底アンカーである程度固定する
いざとなればケーブルを切断して動かすことができる
実際のケーブルの重心は静止軌道のちょっと上
張力や海水の重さを利用して調整する
海上ポートはセキュリティが大事
NASAのケネディ宇宙センターも陸の孤島で
セキュリティは厳しい、その程度は必須
(テロ対策など)
外洋の波の荒いところに建設する必要がある
海上ポートは海中(浮力)、海上のバランスが大事
水中翼船のような感じ、波や津波に強い構造に
クライマー、具体的な設計はせず、大林組の得意分野ではない
概要だけ、細長い円筒形、ローラーでケーブルを挟んで昇降
エネルギー(電気)は地上からレーザー光かマイクロ波で送る
クライマーの質量は100トン、ペイロードは70トン、
6両編成、1両は直径7.2メートル、長さ18メートル
だいたい飛行機の胴体と同じくらい
全長は144メートル、定員は6両で30名
(九州の「ななつぼし」とほぼ同じ感じ)
◯主催者様からのコメント
「> 全長は144メートル、定員は6両で30名
> (九州の「ななつぼし」とほぼ同じ感じ) これは私の記憶違いでした。 「ななつぼし」は機関車1両+客車7両の編成で、乗客の定員は30名だそうです。」
※質問 クライマーは階層構造になる?
→30階建てのワンルームマンションのイメージ、1両あたり5階
時速200kmで上昇、新幹線より遅い
5分で地球の丸みが分かる、3時間で大気圏を抜け星が見える、
30分で体が軽くなり始める、2時間で重力が10%減る、
1日弱で火星センターに到着、2日で月センターへ、
5日で低軌道投入ゲートに到達、
8日で静止軌道ステーション、エレベーター先端までは3週間
◯主催者様からのコメント
「> 3時間で大気圏を抜け星が見える
資料の上では15分になっています。 単純計算で地上50kmですから、飛行機では到達できない高度ですね。 国際的に「宇宙空間」とされているのは高度100km以上ですが、
成層圏の上限ですから「大気圏脱出」と表現しても差し支えのない高度だと思います。」
※質問 高層大気、大気圏外で音速は出せる?(小説の描写にあった)
→ちょっとわからない
◯主催者様からのコメント
「> ※質問 高層大気、大気圏外で音速は出せる?(小説の描写にあった)
> →ちょっとわからない このあたり、ちょっとわかりにくい質問と解説で申し訳ありません。 上述の「妙なる技の乙女たち」にクライマーが大気圏内で音速を突破する 描写がありますが、最初はそこまでの加速は必要ないという回答を会とは
別の場でいただいています。 時速200kmで走っても大気圏脱出にかかる時間は15分ですから、
大気圏内ではゆっくり走り、真空になってからさらに加速すればいいという考えのようです。」
※降りるときに燃え尽きない? → 遅いから大丈夫
宇宙エレベーターは秒速30メートル
現在の衛星やソユーズ宇宙船はだいたい秒速8km
2階 火星重力センター
3階 月重力センター
それぞれ質量100トン、定員5名
重心より下なのであまりたくさんの人はいられない
それぞれ実験や訓練をする施設に。
将来の火星移住に向けて、火星環境に適応する必要がある
低重力で長時間暮らせるか、動植物が育つかなど
地上では低重力を長時間作り出せる設備は作れない、
せいぜい数秒、ハチが飛べることくらいは確認できている
4階 低軌道衛星投入ゲート
5階 静止軌道ステーション(イラストがスライドに表示)
モジュールを組み合わせていく方式で建設
拡張性が高く、冗長性も高い
1つ、あるいは2つのモジュールから運用開始できる
ケーブルに沿って縦長の構造、静止軌道なので安定
円筒形に、インフレータブル構造
静止軌道ステーションから地球を見ると
手で持って腕をのばしたサッカーボールくらいに見える
内部は宇宙ステーションの実験棟「きぼう」より少し広いくらい
無重量を楽しんだり、星や地球を眺められる
大型の太陽光発電施設も建設
6階 火星連絡ゲート、57000km
静止軌道を過ぎると、逆に遠心力によって
地上と逆方向に重力を感じることになる
高度47000kmより上に達すれば第2宇宙速度は出る
石川さん、火星大好き、ぜひ人間を送りたい
7階 カウンターウェイト、ここから木星や土星、
小惑星などへ探査機を放出する
☆まだまだ技術開発、ブレークスルーが必要、主に3点
カーボンナノチューブを長くする技術、
まだ数センチくらいしか作れてない
クライマーのメカニズム
宇宙エレベーター協会が大会を開いてるが
まだまだ課題が多い
エネルギーを無線で送る技術、これもまだ開発途上
お金と時間があればいずれ出来る!(はず)
☆誰が作る?誰がお金を出す?
一国や一企業ではおそらく無理
国際的な枠組みでやる必要
☆建造費はいくらかかる?
10兆円(衛星、打ち上げロケット、クライマー、ステーションなど)
☆10兆円かけて作る価値はある?
観光では賄えない(オマケ的要素)
大型の太陽光発電施設を作ることでペイする
1基30年運用すれば10兆円になる(イニシャルコストがペイ)
ランニングコストは1kgあたり1万円
体重50kgの人は50万円で宇宙へ行ける?・・行けない
食料、クライマーの重さ、などなど他にもコストがかかっている
一人あたり1000~2000kgの負担になる
旅費は500~1000万円くらいになるという試算
(ちなみにスペースシャトルの目標が1000万だったが
実際はそうはいかなかった)
最後に2分の動画を鑑賞
☆質問受け付け
※ケーブルの振動はどうする?
→風、コリオリの力、など
運動方程式を作ってシミュレーション、
月(25h)や太陽(24h)の重力変化の影響が一番大きい
しかし問題ないとの結論、振動で共振しない構造に
長さ、高さで固有の振動数がある
例えばマンションなら地震と共振しないよう設計
およそ10万kmの宇宙エレベーターは
月や太陽の重力変化の同期と共振しにくい
※誘導電流
→あんまり検討してない、次の検討課題
地場などによる電流発生も
カーボンナノチューブは伝導率も高い
送電にも使えるか?あまりケーブルに負荷をかけたくない
送電は無線(レーザー光やマイクロ波)or有線も考えられる
複数のケーブルを作ってそちらに送電機能を持たせる?
※極軌道衛星が使えなくなるんじゃ?
→ケーブルと交差してしまう
他にも隕石やスペースデブリ、風、雷といった外乱要素がある
避けなきゃいけない、どうやって?具体案はまだ検討課題
なんとかケーブル側で避ける
中間ステーションでスラスターを吹かすとか(振動が問題)
帳尻はなんとか合わせられる・・はず
宇宙エレベーターそのものは剛ではなく柔の施設
※カーボンナノチューブの課題
→複合材料、混じりけナシの結晶の繊維が理想
補強の方法、接着剤は重くなるので使えない
分子どうしでくっつく、なんちゃら力(←聞き取れなかった)
10万kmは長いので大変、つなぐ技術は必須、重くならないこと
◯主催者様からのコメント
「> 分子どうしでくっつく、なんちゃら力
「ファンデルワールス力」です。 分子が非常に接近すると電気的に中性でも分子同士が引き合う力が発生しますが、 この力のことを言います。
非常にぶっちゃけた言い方をすると、カーボンナノチューブのリボン同士を
ぴったりとくっつけるだけで接着します。 単位面積あたりでは非常に弱い力ですが、宇宙エレベーターのケーブルには
莫大な表面積がありますので、接着力としては十分です。」
※宇宙環境のケーブルへの影響
→放射線、紫外線などの影響はまだわかっていない
高温には強いことがわかっている
※クライマーの故障
→事故対応は重要、まだ検討課題
生命維持装置系はおそらく大丈夫
以上です。