HOMESTAR(ホームスター)に思う
|
どれくらい売れているのかはちと分からんのですが、Google検索してみたところ、
「HOMESTAR」と「ホームスター」合わせて80万件以上ヒットしているところをみると、
やはりかなりの人気があることは明らかだと思います。
2万円という値段は玩具にしては少々お高いですが、
それに見合った星空投影能力を有していて、また家で手軽に見られるということで、
所謂、癒し系アイテムとして買っている人が多いんでないかと思います。
ただ、ホームスターがここまでヒットする状況には
星好き人間としてはちょっとばかし複雑な思いがなきにしもあらず。
なんでかと言いますと、理由は大きく分けて2つありまして、
1.ホームスターが売れる背景には、都市部などの光害によって、
実際の星空が見られなくなっている、という状況があること
2.ホームスターの投影能力を絶賛する記事が多いけれども、
本物の星空と混同しているかのような表現が多いこと
になります。
ひとつ目の理由は、言うまでもないかと思いますが、
実際に天の川を見たことがある、という人が年々減ってきているように、
都市部とその周辺地域の圧倒的な空の状態の悪さです。
排気ガスなどによる大気汚染と、ネオンなどの照明によって空は夜でも明るく、
1~3等星以上の明るい星がやっと見えるかどうか、といったところもざらにあります。
東京のど真ん中ではオリオンですら判別できないところもありますし、
それだったらばプラネタリウム装置で、となってしまうのも致し方ないところです。
個人的により気がかりなのが、ふたつ目に挙げた理由の方です。
ホームスターの投影を実際に見たことがない僕が書いても説得力ないですが、
日本科学未来館のメガスターⅡを見たことがあり、
また、大人の科学09号 究極のプラネタリウムを持っていますんで、
そのへんを踏まえて書かせてもらいます。
まず、プラネタリウム装置によって作られる星空と
実際の(光害のない)星空はまったくの別物だということです。
プラネタリウム装置による星空を否定する気はまったくないですし、
メガスターを筆頭に、その投影能力の進歩には目を見張るものがあります。
しかし、空間的な奥行きや、周辺部の歪みといった点では
まだまだ実際の星空には及ばないのもまた事実です。
初めてメガスターⅡを見たときに、その天の川の表現能力に圧倒されましたが、
一方で何かが違う、という感覚も抱きました。
自分の場合、幸か不幸か愛媛の山奥にある祖母宅で
小学生の時分から本当に美しい星空を眺める機会があったために
そういった感覚を持つことができたんだと思いますが、
そうした点も含めて、自分はプラネタリウムの星空には満足しきれない部分があります。
(どこが、というとなかなかうまく言葉にできないんですが)
もちろん、誰しもが田舎へ行って美しい星空を気軽に楽しめるわけではないですし、
人工物(プラネタリウムの星空)よりも自然物(本物の星空)が絶対的に優れている、
といった優劣を主張するつもりもまったくないです。
(プラネタリウムには、天候や時間を問わず見られるという長所がありますし、
また、好きな季節の星空や南天の星空を投影することも可能です)
自室でホームスターを投影して、その美しさに心が安らぐのであれば
それはそれで十分に素晴らしいことだと思います。
プラネタリウムを訪れて、最新の投影技術による星空を堪能することも
立派な星見のひとつだと思います。
ただ、願わくばそこで終わってしまわないで
数年に一度、あるいは十数年に一度、少なくとも一生に一度は
本物の天の川が見える星空を、多くの人に見て欲しいと思います。
はっ、と息を呑むような感動を(誰しもがそう思うかは分かりませんが)
知っておいて損はないかと思いますんで。
長々と書いてしまいましたが、
要は年々高機能化するプラネタリウムに押されて
本当の星空を眺める機会が失われてしまうんじゃないか、
と勝手に危機感(と違和感)を覚えたんでちょっと書き記してみました。
ホームスターの人気や各プラネタリウムの復活によって、
普段はホームスターやプラネタリウムで楽しみ、
たまには本物の星空を楽しむ、といった相互補完が実現すれば
自分が書いたことは単なる杞憂で終わるんでないかと思います。
(少しずつですが、相互補完は実現しつつあるような気がしています)