小惑星探査機はやぶさ、カプセルが日本に到着
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「はやぶさ」から分離され、オーストラリアの砂漠に落下したカプセルを乗せた専用のチャーター機が17日午後11時半前に滑走路に着陸しました。カプセルには、「はやぶさ」が、地球から3億キロ離れた小惑星「イトカワ」に着陸した際、岩石や砂が入った可能性があり、太陽系初期の惑星誕生の謎の解明につながると期待されています。カプセルは、トラックに乗せられて、神奈川県相模原市にある宇宙航空研究開発機構の研究所に運ばれることになっています。そして分析は、ほかの物質が混じらないように密閉した特別な施設で行われ、中に物質が入っているかどうかがわかるまでに1か月程度、また、成分の詳しい解析が行われると、数か月かかる見込みだということです。
で、相模原に到着したときの様子を動画で撮った方もいらっしゃいました。
「はやぶさ」カプセルが日本に到着、非破壊検査で異常なし
「はやぶさ」のカプセル、およびカプセルに続いて回収された熱シールドは、ともに6月17日14時22分にチャーター機で豪・ウーメラ空港を出発、同日23時23分に羽田空港へ到着した。翌18日の午前0時50分に羽田空港を出て、午前2時15分にJAXA相模原キャンパスに到着した。
カプセルの入った輸送用のケースは、JAXA相模原キャンパス内にあるキュレーション設備(正式名称「惑星物質資料受け入れ設備」)で開封された。その後、カプセルは二重の袋に包まれたまま一旦JAXAの調布航空センターへ運ばれ、X線CTスキャンによる非破壊検査が1mm間隔で行われた。その結果、カプセルの中心にあるサンプルコンテナ(画像3枚目)のふたのシールなどに異常がないことが確認された。
「はやぶさ」カプセル、1mm以上の試料は無し
宇宙機構のはやぶさプロジェクトチームは同日夕、カプセルが破損していないかをエックス線で検査した。1ミリ・メートル間隔で調べたところ、カプセル内の密封容器は壊れていなかったが、その中に砂や石などの試料はみつからなかった。
はやぶさは、2005年に小惑星イトカワに着陸した際、表面の砂などの採取を試みた。しかし、装置がうまく働かなかったため、いまは0・01~0・1ミリ・メートルほどの小さな試料が入っていることに望みをかけている。
今後、カプセルを解体して密封容器だけを取り出し、エックス線で再度検査。その後、開封して詳しく内容物を調べる。中に試料が入っているかどうかが判明するまでには、数か月かかる見通し。
だそうですが、1ミリ以上のかけらがある可能性はもともと低かったので
これも想定内のことですね。
分かりやすいカプセルの中身ばかりに注目が集まってしまうのは仕方ないことですが、
すでに「はやぶさ」は各種実証試験をクリアして、十分過ぎる成果を上げています。
そのへんがまともに報道されていないのが悲しいところですが。
BSフジ PRIME NEWSのアーカイブ
昨夜放送されたBSフジのプライムニュースに
川口プロマネと渡部教授(国立天文台)が出演されました。
そのダイジェストがアップされていますので、気になる方はぜひ。
動画は1週間くらいで消えるそうです。
喜多充成氏がカプセル到着について取材したときのツイッターまとめ
《はやぶさカプセル到着》6月18日未明、豪で回収されたカプセル(インストゥルメンタルモジュール)の相模原キャンパス到着・キュレーション設備への搬入に続き、午前2時34分から大会議室で行われた記者レクでの発言。前段は吉川真准教授、途中から川口淳一郎プロマネ。
《到着》前回のTCM3/TCM4同様、文部科学記者会の要望により設けられた取材機会に、関係各位のご配慮の下に参加しています。関係方面やその他方面への御礼の意味も込めツイートします。個人のブログなどへの引用・転載もご自由にどうぞ(というか、そのためのツイートです)。
《到着》この内容は、私自身が執筆する記事や、山根一眞師匠の近刊 http://magazineworld.jp/books/all/b.php?gosu=2103 のためにとったメモからの、抜粋です。@magazinehouse
《到着》吉川真准教授:非常にホッとしています。いよいよカプセルを開けイトカワ表面物質を分析する作業が始まります。到着した輸送コンテナの輸送状態を確認後に開梱しX線CTスキャンで内部を確認、(断熱カバーを止めている)ネジを外す作業に入ります。これに1週間程度はかかります。
《到着》吉川:CT撮像は調布で行います(航空機用複合材の研究チームの拠点がある)が、実施日時は公開いたしません。現在カプセルが保管されているのは、二重三重のキーカードや入室制限に守られた場所です。
《到着》(保険は? かけようがないとは思うが……)吉川:はい、分かりませんね(笑) サンプルコンテナを傾けて転がり出てくれれば嬉しいが、想定しているのは「ホコリ」のサイズなのでCTでは判別し難いと思う。
《到着》吉川:テフロンのヘラで掻きだし、顕微鏡で確認していく作業に、時間がかかる。そうやって見つかった「ホコリ」も、地球からのものだったかどうか成分の分析をしないと確定的なことは言えない。これに最長、半年かかるとみている。
《到着》吉川:キュレーション設備では、サイズや形状などでサンプルを分類整理しカタログを作成。そして初期分析チームに配布する。
《到着》吉川:(それなりの分量があれば)一部は配布せずに残し、世界の研究者に呼び掛け分析のアイデアを公募することになるだろう。誰に何を配布しどう分析するかを決める委員会も設けられている。
《到着》吉川:「ホッとした」とは言ったが、ほんとうにホッとできるのは(サンプルが)確認できた時点のはず。でも(無事カプセルが到着したことで)ホッとしている。
《到着》(プロジェクトを振り返ると?)吉川:担当していたのは軌道決定。イオンエンジンを使って加速しながら飛んでいる宇宙機の軌道を精密に決めるのはとても難しい。しかも目的地は小惑星であり、ランデブー飛行。
《到着》吉川:要求水準が非常に高く、苦難の連続だった。結局、イオンエンジンをときどき停めてもらい、その間に精密に測ることでそれに応えた(カゲの声:その分、イオンエンジンによる加速量のノルマが厳しくなった……)。イオンエンジンによる深宇宙航行の、大きなステップになった。
《到着》吉川:印象に残っているのは、やはり到着時。さしわたし0.5kmという小さな天体を間近でじっくり見るのは人類にとって初めてのことですから。それも日本の力で。そして先日のリエントリー。現地には行けなかったが、映像を見てほんとにすごかったんだな、と。見た人がうらやましい。
《到着》吉川:サンプルコンテナは直径約6cm、高さ約7cmの円筒形。専用チャーター機に同乗してきたのは3人。山田(哲哉・准教授)さんは、自分たちが作ったヒートシールドが見つかって一緒に持ち帰ることができ、非常に喜んでいた。カプセル発見より嬉しかったようだ(笑)
《到着》吉川:実際にあれだけの速度で再突入したものなので、今後の研究の上でもたいへん貴重な実物。キュレーションを担当する安部(正直・准教授)さんや、サンプラーホーンを担当した矢野(創・助教)さんとは、おめでとうと言い合った。
《到着》(午前3時11分、川口プロマネが会議室に)川口:7年ぶりにカプセルと対面してきました。見る限り新品同様で、7年前に貼られたカプトンテープも、昨日貼ったもののようでした。焼けこげている印象は、まったくない。(カプトン=絶縁耐熱フィルム。物質名はポリイミド)
《到着》川口:背面にはケーブルの断端が残っていた。2007年のカプセルのフタ閉め運用の際、ラッチをかける「NEA」と呼ばれる機構を駆動するための、電力供給のケーブルだ。
《到着》川口:2007年の時点では「フタは閉まっているはず」としか言えなかったが、しっかりと閉まっていたことを今日確認できた。
《到着》川口:また再突入直前、カプセルを分離するときに切ったケーブルも断面が鮮やかなまま残っていた。すべてのシーケンスが予定通り進んだことがよく分かる。
《到着》川口:さらにカプセルで別の発見がありました。製作したチームの20名ほどの名前を、名刺大の紙にプリントしたものがカプトンテープで貼られていた。こうした落書きはよくやることだが、これもまるで昨日貼られたかのようだった。
《到着》川口:日付は2003.3.18。ここで最終組み立てをした日であろう。まさにこれはタイムカプセルだ。(カゲの声:プロジェクトの7年間と、数十億年の太陽系進化史の両方の意味か?
《到着》川口:はやぶさには母港が二つある。一つが宇宙に飛び出した内之浦。もうひとつがここ相模原だ。その母港に還ってきた。厳密にいうと、出たの環境試験棟からで、帰ってきたのはキュレーション設備だから、もう数十メートルある(笑)。
《到着》川口:ここ(大会議室)に来るのが遅くなったのは、中に何か入っていたとかいうことではない(笑)。(振ってみてカラカラと音はしなかったか?)やっていない(笑い)。密封していたガスのサンプリングを2度行うなど、作業を慎重に進めたため時間がかかった。私は見ているだけだが。
《到着》(500点満点の採点表に関して)川口:技術面では満点ですよね。戻ってきたんだから。失敗は多かったが、その経験は次に生かせるはず。どんなにダウンしても、15ラウンドまで持てばいいじゃないですか。あれ、今もボクシング、15Rでしたっけ?(カゲの声:12Rらしい)
《到着》(日本全体に対しメッセージは)川口:もっと自信や希望を持てるんだというメッセージの、その駆動力の一部となれればと思っている。またこのプロジェクトの成功は、日本のみなさんすべてが賞賛されるべき出来事だと思っている。
《到着》(個人的にも、大きな人生の区切りとなるのでは?)川口:基本的には幸運だったと思っている。あるところまでは科学や技術で努力できるし、できるだけのことはやったが……
《到着》川口:あるところから先は、どうしようもない領域。それを乗り切るのは“根性”だろう。的川さんは「川口君はあきらめが悪い男だから」というが(笑)、そこは“根性”と言ってほしい。
《到着》川口:キュレーション設備は2008年に竣工した。「これがムダにならないでよかった」というホッとした気持ちも大きい。探査機があの状態のときに、これだけのものを作ろうという決断は、大英断。その高い見識に感謝したい。
《到着》川口:しかしもっとボロボロかと思っていたが、まるで“新生児”のような印象ですね。“形見”でもあるんですけどね。ごくろうさんでした、と言いたい。これをどう役立てるか、ですよね。
《到着》(はやぶさが子供なら、カプセルは孫か?)川口:7歳の子で、孫がいるのもヘンな話ですね(笑)
《到着》(同乗してきた3名とは何か言葉を交わしたか?)川口:すごく疲れているはずなのに、すごくハイ。はしゃいでいる(笑)。
《到着》川口:「いつできる」とはまだ言えないが、ヒートシールドやパラシュートなど、長い旅をして帰ってきたはやぶさの記念品を公開すべく、準備をしている。
《到着》川口:研究者たちはもっと解析の時間が欲しいと言うが、このプロジェクトは国民がスポンサー。応援してくれた人たちに、見てもらわなければならない。鋭意、説得中です。(以上)